ティーカップとイギリス菓子の世界観。『Rose&M』

2022/12/06

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三鷹の憩いの場として定着している喫茶店

三鷹駅南口改札を出て中央通りをまっすぐ徒歩およそ10分。赤いバラの看板が目印の『カフェRose&M(ローズ&エム)』があります。

人通りの多い通りに面した立地ですが、ドアを開けると深い色合いの木目を感じられる落ち着いた雰囲気が漂っています。一人の利用でも友達同士でも、その時の気分に合わせてテーブル席・ソファ席を選べます。季節を感じられるテラス席は、愛犬を連れてティータイムを過ごす方にも人気です。

本棚には英国カラー漂うものなど、自由に読むことができる本が並べられているほか、焼き菓子・オリジナルブレンド紅茶・コーヒー豆などのオリジナル商品、ティーカップ・CD・アクセサリーなどセレクト品販売のコーナーもあります。

自分らしく過ごせる空間づくりを目指して

土日は街歩きを楽しむ方の来店も多いです。平日は近所のマダムがお友達同士でくつろぎに来たり、コーヒーチェーンではオーダー方法がわからなくて困るというシニアの男性がお一人で来られることもあります。放課後に趣味の映画の話に熱中していた学生さんが、別のお友達を連れてまた来店することもあります。

「お店として大事にしていることは、お客さまそれぞれのブレイクタイムを心地よく過ごせますように、という気持ちです。」店主の江口さんは仰います。

「にっぽんの宝物グランプリ」というコンテストで受賞した、看板商品であるレモンケーキと紅茶のセットを『風の散歩道レモンケーキとティータイムセット』として応募したのは、 お店の商品を紹介したかっただけではなく、 “それぞれの憩いのティータイム”を過ごして欲しいという気持ちを伝えたかったからです。

江口さんが心地よく過ごしてほしいと願うブレイクタイムは、店内に限りません。「ティートリオ」と呼ばれるカップ&ソーサーとケーキ皿の3点セットなどの茶器にこだわることで、家でも自分時間がワンランクアップできるという提案もしてくれます。

風の散歩道経由でこの場所へ

小金井出身の江口さんにとっては、三鷹は馴染みがある地でした。

吉祥寺で紅茶店を営んでいた時に、玉川上水の「風の散歩道」沿いの店舗に縁があり『Rose&M』をOPEN。その後現在の場所へ移転。その時期はちょうど2019年12月、コロナ禍のリスタートとなりました。

不安も多くリラックスしづらかったこの時期は特に、ホッとくつろいでもらえたらいいなという気持ちでお客様に接していたそうです。商店街のマルシェに出店を始めたり、商品をコンテストに応募したりと地域に根ざした運営をしていく中で、少しずつお店の認知や常連さんを拡大してきました。

赤ちゃん連れのママも、気軽にどうぞ

江口さんは、一人でベビーカーを押しているママが、子育てで疲れていないかを気にかけています。遠くの実家の親にしばらく会えていなかったり、コロナの影響もあってママ友と気楽に喋る機会が減ったまま、孤独な気持ちを抱えていないかしら。ストレスを溜め込んでしまっていないかしら。と気になり、赤ちゃん連れで一人で来店するママに話しかけてみることがあるそうです。

すると“お茶をゆっくり飲みたいから赤ちゃんを抱っこして欲しい”と本音を伝えてくれることも。江口さんが赤ちゃんを抱っこしている間、ママの肩の力が抜けてリラックスした表情を見せてくれると、江口さんもホッとします。

遠方へ越したママが、思い出巡りで三鷹を再訪した際に、当時赤ちゃんだった娘さんを連れ『Rose&M』を再訪したこともあるのだそうです。大変だったあの日々を癒してくれた存在として、ママの心の中にも思い出であり続けているのですね。

3段階使いのレモンが主張する『風の散歩道レモンケーキ』

『Rose&M』がリピートされるのは、居心地の良さに加えて自慢のメニューの存在ゆえ。

『風の散歩道レモンケーキ』は原料にこだわっており、三鷹産の平飼い卵・北海道産小麦・ワックスを使わない国産レモンを使用しています。香り豊かなレモンは、主に自然豊かな広島県呉市「下蒲刈島(しもかまがりじま)」の段々畑から届きます。

レモンの酸味とケーキのコクが程よく調和していて、口の中いっぱいに広がるレモンの風味にファンが多い人気の品です。三鷹市ふるさと納税の返礼品にも登録され、数々の受賞歴もあります。

レモン果汁は、3段階で入れます。

1.生地に 2.焼き上がり時ケーキ表面に塗るシロップに 3.最後にかけるアイシングに
一本のケーキにレモン4個分もの果汁が使用されています。

レモンの爽やかさと酸味・甘いアイシングのバランスが絶妙で、記憶に残る美味しさです。

喫茶の帰りにテイクアウトしたり、帰省前に三鷹土産として買いに来たりする方も多いのだそう。東京都ならではの加工食品「東京都地域特産品認証食品」にも認証されているので、都内各種イベントに東京の特産品として出店もしています。

オーダー後に焼き上げる、自信作のスコーン

江口さんがこだわったのは、英国伝統のティータイムに欠かせないプレーンなスコーン。『Rose&M』では注文を受けてから店内のオーブンで焼き上げるのに20分ほどかかります。この間、キッチンから漂ってくるスコーンの香りにわくわくします。
出来立てアツアツの状態で目の前にサーブされたスコーンの香ばしい香りで高揚感がMAXに。

ひと口食べると、素朴な味わいの中にもバターの芳醇な香りと小麦の風味が口の中を駆け巡ります。外側はさっくり、中はしっとりほわほわとした食感も楽しめます。

本場イギリスでは少し冷ましてから食べることが多いそうなのですが、『Rose&M』では焼きたてのスコーンを召し上がって頂くことができます。そこの美味しさにも気づいて頂きたいです。
ひとつ目のスコーンを思わず食べきってしまいそうになり、2個セットになっている所以がきっと理解できますよ。

手作りのジャムとクリームをたっぷり付けて…

もちろんそのままでも美味しいですが、季節に応じた手作りのジャムとクリームをたっぷり付けると次のステージへ。

この日に別添えされたものは
・甘み:つぶつぶの食感が楽しめる木苺のソース
・爽やかさと心地よい苦さ:広島産レモンの皮が惜しみなく入っているマーマレード。
・リッチ&濃厚さ:イギリス食文化の至宝と呼ばれる「クロテッドクリーム」。バターより食感が軽いのに、生クリームよりも乳脂肪分が高く、無骨なスコーンに欠かすことができません。

スコーンとこの3種類の付け合わせが、それぞれの魅力を引き立て合っています。味をどういう組み合わせにするか?割合は?と自分が一番好きなパターンを探すうちに食べ終わってしまいます。もう、これは絶対に食べて欲しい!

イギリスのティータイムでは、一般的にスコーンは紅茶とセットになっています。『Rose&M』では『ふわふわミルクティ』との相性が抜群で人気の組み合わせ。器もアンティークのカップ&ソーサーやこだわりの食器を使用しています。どんな素敵な柄が自分のために選ばれてくるのか、これもお楽しみのひとつ。

美味しいと思うものを極めてきて、イマ。

「研究のために色んなお店のスコーンを食べ歩いたのですか?」と質問したところ、「自分が美味しいと思うものを徹底的に追求したらここに辿り着いた。食べ比べなどは特に意識してやってきていない。」とのことでした。このスコーンが、ある日イギリスから来られた海外インバウンド客から「traditionalなママの味」とコメントされたことが大変嬉しかったそうです。

これからの私たち

江口さん自身は「今後も自分にできることをやり続けたい。そして他のお店にはない特化したモノを作り出していきたい。」という希望を抱いています。三鷹土産として定番になりつつある『風の散歩道レモンケーキ』や、20分の焼き上げ時間を待つのが苦にならないスコーンのような『Rose&M』の新たな看板商品が増える日が来るかもしれません。
更に平日来店する客の母数を上げていくため、店舗を持たないお菓子屋さんに間借り営業してもらったり、レモネードスタンド※で小児がん患者の力になりたい子ども達に店舗前スペースを提供したりと、人と地域のプラットフォームとしての存在感も増してゆくことでしょう。私達それぞれが心穏やかなひとときを過ごせる場を提供し続けながら。

※レモネードスタンドとはレモネード販売で得た収益を、小児がん治療研究や小児世代のがん支援に役立てるチャリティー活動です。

Cafe Rose&M(ローズアンドエム)
住所 三鷹市下連雀4-17-10 ひだりまきビル1F
TEL 0422-26-8670
営業時間 9:00~19:00
モーニング 平日・土曜9:00~11:00(水・日・第3月曜はお休み)
※最新の営業時間はお店のHPやSNSでご確認ください。
定休日 水曜日・第3月曜日
公式HP https://roseandm.com/
Instagram https://www.instagram.com/cafe_rose_m/
Twitter https://twitter.com/caferoseandm
Facebook https://www.facebook.com/caferoseandm/

編集後記

その日ごとの手作りケーキ・要予約のアフタヌーンティセット・三鷹で数多くはないモーニング。記事内では触れられなかったこともまだまだありますが、メニューは敢えてご紹介しません。皆さんがRose&Mでメニューを開くわくわくタイムを邪魔しないように。

スコーンを注文してからの20分も「想像は最良の調味料」という新たなワードを味わいながら楽しんで頂けたらと思います。


次のあなたのおひとり様タイムはこの場所で、日々の雑事をから離れ、好きな飲み物を片手にホッとしてみてはいかがでしょう。居心地のよいオアシスといっても過言でもない空間は、第3の自分の居場所となるかもしれません。

文: 橋都 愛