年齢問わず笑顔にする。温かさが溢れたパティスリー『うーおの森』

2022/12/24

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ショートケーキにチーズケーキ、シュークリーム、クッキー、、、日本人の生活に根づいた洋菓子は、見ているだけで、小さい子どもからお年を召した方まで思わずにっこりしてしまうでしょう。ほっと心がほころぶような、お菓子屋さんが街にあると、それだけで笑顔になります。

「うーおの森」は、三鷹のオアシス。夢がたくさん詰まっています。お店があるのは三鷹市井口。武蔵野赤十字病院近くのかえで通り沿いに、大きなガラス窓のある淡いピンクの建物がお店です。JRの駅からはやや離れるものの、連日多くのお客さまで賑わっています。

店内ではマスコットキャラクターが、お出迎え

「うーおの森」とは、なんだか不思議な店名ですが、これ、オーナーの名前から。

苗字が魚住(うおずみ)さんなので、皆さんに親しんでもらえるよう、「うーお」なのです。
リスを模したマスコットキャラクターの「うーおくん」もいて、すっかりお店の顔として親しまれています。


2020年秋に移転する前は「おやつのうーお」として身近にあったお店した。しかし、お客さんが増え、48坪に拡大移転オープンするにあたり、店名も変更しました。森の名前にふさわしく、いろいろなお菓子が集う場所として、命名しました。

店内に入ってすぐのスペースには季節のお菓子や人気商品がずらり。そのまま進むと、ショーケースがあり、ショートケーキなどの生ケーキが並んでいます。平日で12種、週末には15ほどの、季節の果物などをあしらったものも多く、見た目も素敵なケーキが並びます。

壁側もお菓子のディスプレイになっており、プレゼントにふさわしい箱入りのお菓子や、焼き菓子などが並んでいます。

家で食べるおやつ、スペシャルな日のためのホールケーキ、ちょっとした手みやげ、季節の贈り物など、日々の生活の中の多様なシーンで役立ちます。

「三鷹に住むお客様に寄り添ったお店になりたい」

オーナーシェフの魚住祥一郎さんは、大学を卒業してから専門学校に通い、お菓子の道に。
世田谷の洋菓子店の老舗で修業をした後、自身のお店を構えました。

「私は中央線沿線育ちで、学生時代を過ごした場所で独立したい思いがあり、独立するときにまずは三鷹で探しました。ですが、なかなか思うような物件がなく、埼玉などでも探していて、たどり着いた先は、結局三鷹でした。呼び戻されたかのような気持ちになりましたね。


「前店から数えると10年以上、三世代にわたり地域のお客さまに愛されるお店になりました」と魚住さんは語ります。

お客さまだけでなく、生産者とつながれるところも三鷹のいいところだと魚住さんは言います。

「三鷹は住宅街の中に畑がある都市農業の町でもあります。『うーおの森』では三鷹の農作物を積極的に使っています。主なものにブルーベリー いちご、ブドウ、キウイフルーツ。ケーキやタルト、ジャムに使用しています。果物は彩りが美しくなるだけでなく、旬を感じさせる素材でもあり、季節を演出してくれます」。

三鷹の生産者とつながり、お菓子にも活用

では、具体的にどんな果物を使ってどんなお菓子に使っていらっしゃるのでしょうか。
ブルーベリーの場合は「吉野果樹園」の無農薬ブルーベリー。夏の時期を中心に、タルト、プリン、ベイクドチーズ、チーズパウンドに使用され、美しい青い紫が輝きを放ちます。
生ケーキだけでなく、ジャムにしてクッキーに渦巻き状に練り込み、お値段もお財布にやさしい手頃なおやつとしても活躍します。

地域との連携は、単に素材を使うだけではありません。商品を説明するポップに、どこのどういう果物を使っているか紹介し、パンフレットもおいています。これをきっかけに、果物狩りができる農家さんであれば足を運ぶお客さまもいるし、逆に農家さんで使っているお菓子屋さんがあると知り、「うーおの森」を訪ねる人もいらっしゃるのだとか。
実際に農家さんが愛情を込めて育てていることを知ると、果物にもお菓子にも、そして三鷹という街にもより愛着を感じてもらえる、と魚住さんは笑顔でいいます。

お菓子に使う果物の王道といえばいちご。このいちごも三鷹の農家「ICHIGO HOUSE」が栽培したもの。甘くジューシーな完熟イチゴは、もちろんショートケーキに。その名も三鷹ショート。ふわふわ生地にコクのある生クリームと相性抜群です。

王道のショートケーキ以外にも、ちょっと大人な生ケーキ、ビジューショコラハートもあり、こちらはいちごをシロップ漬けにして、チョコレートムース、ビターチョコレートと合わせた一品。深みのある味わいと甘さが口の中で上品に溶けていきます。

ショートケーキでもうひとつ。黄色いキウイフルーツ“東京ゴールド”を使ったものもあります。東京ゴールドのショートは、やはり三鷹の農家「よしの園」のもので、酸味が少なく甘さが強いキウイフルーツはショートケーキによく合います。

果物だけではありません。イタリア料理などでおなじみのハーブ、ローズマリーもクッキーに使用。天神山スドーボールは、三鷹の「天神山須藤園」のローズマリーを使い、甘いけど、キリッと風味豊かな、ほろほろ食感のお菓子で、コーヒーや紅茶だけでなくお酒にも合わせられそうな一品です。

通年食べられるお菓子で三鷹らしさを体現しているものといえば、ミタカステラでしょう。三鷹産の平飼い卵と100%天然純粋ハチミツで作った洋風カステラで、ふわふわのやさしい甘さが特徴です。素材のよさを活かすためにできる限りシンプルな材料で作っているとか。おだやかですーっと体の中に入っていく味わいで、食べ飽きません。
自宅用はもとより、手みやげやギフトに買い求める方も多く、「食べてみて!」と言いたくなるのも納得です。

バスクチーズケーキや大人のシュトーレンといった、時代に合わせたもの、洋酒の風味をきかせたシックなお菓子もありますが、小さな子どもやお年を召した方も足繁く通われるので、ふんわりやさしいお菓子が基本です。

「うーおの森」の看板商品たち

いちばん人気は、地中海産レモンのシロップをかけて仕上げた、土星のわっか「地中海レモン」は、甘酸っぱい焼きドーナツ。揚げたものよりもふんわりとした食感があります。

メレンゲをたっぷり使ったふんわりスポンジ生地で口溶けのよい生クリームをくるっと巻いたう~おくんのしっぽロールも看板商品のひとつです。

森のチーズケーキは濃厚でリッチな一品。
そのままでも、ブルーベリーソースなどを添えていただくだけでなく、クラッカーに乗せるとワインのお供にもなります。半解凍で食べるとしゃりしゃりした食感が楽しめるというのも新鮮です。

オンラインでも、店頭でも感動を与えられるように

イベント用のお菓子や、メッセージ付きのお菓子も要望が高く、「だいすき」「安産祈願」「残暑お見舞い申し上げます」などの一言を記したメッセージクッキーも好評なようです。フードプリンターで手書きのイラストや写真をプレートにして、オリジナルクッキーやケーキも作れるとあって、特別な日のプレゼントに適しています。

また、焼き菓子などはオンラインでも購入可能です。ギフトなどでもらって食べた人が気に入って、子育てなどで忙しくて行きたくてもなかなか足を運べない、特にコロナ以降、外出するのが気になる、そんな方々に注文する方は24時間いつでも好きな時に、というメリットがあり、お店としても、履歴が残り、間違いも少ないので、オンライン販売はありがたいとおっしゃいます。

地域密着なので、訪ねるのは地元の方が多いのですが、SNSでの発信も積極的に行なっていて、投稿を見ていらっしゃるお客さまも少なくなく、特に旬のアイテムは、SNSでキャッチしてからお越しになる方もいらっしゃるようです。

デジタル世代とも上手に付き合って店を盛り上げている「うーおの森」。今の時代ならではのお菓子屋さんを体現しているようで、これもお店の大きな特徴です。

<店情報>

『うーおの森』
東京都三鷹市井口1丁目22-38
TEL:0422-26-4051
10:00 ~ 19:00
水曜日
https://oyatunowuo.com

<取材後記>

ドアを開けた瞬間に、ふわっとやさしい空気感にあふれていて、心が和みます。
かつては商店街に1軒はあった街の洋菓子屋さんが現代の感覚。洋菓子の定番、ショートケーキやシュークリームなどは、これぞベーシックという普遍的な佇まい。今の時代、こういう奇を衒わないお菓子は、なかなか見かけません。なんだか温かい気持ちになります。

味わいもあくまでやさしい。誰が食べても素直においしいと思える、そんなお菓子たちです。
シュークリームも、昨今主流となりつつあるパリッ、ではなくやわらかい皮。若い方には新鮮で、昭和の時代を知っている人には懐かしい“おやつ”と呼ぶにふさわしい一品ではないでしょうか。
聞けば魚住さんは、世田谷の洋菓子の名店で修業をなさったとか。確かな技術とセンスはここで築かれたのだな、と納得です。
今どきの尖ったお菓子も作っていらっしゃり、なかなか受けなくってと謙遜されましたが、スイーツマニアを称される人たちも多い昨今、こういう最先端のお菓子もあることが、「うーおの森」の幅の広さを物語り、多くのファンを獲得しているように思えました。

魚住さんご夫妻は、夫の祥一郎さんがお菓子作りを、妻の真理子さんが接客やSNSなどを担当されています。祥一郎さんが手がけられるお菓子はもちろんですが、真理子さんのやさしい笑顔と一言二言はお店の看板。心が癒されます。

SNSはそのお店や人の性格が出やすいものです。SNSの発信からファンの心を掴んでいるのも、きれいな写真だけでなく、心を込めた自身の言葉で語りかけるようなテキストで、そのお人柄が伝わってのことなんだろうなぁ、と感じました。

文:羽根 紀子