
三鷹で「漢方薬店緒(いとぐち)」を営むのは、薬剤師の緒形さん。完全予約制の小さな店内で、一人ひとりの話にじっくり耳を傾けながら、その人の体質と今の状態に合う漢方薬を選んでいます。
「漢方って、病名より“その人自身”を見る医学なんです」と緒形さん。
病名がついていなくても、なんとなく不調が続く、眠れない、天気が悪いとしんどい、理由はわからないけれど心が重い——そんな“自覚症状”があれば相談の対象になります。脈や舌の状態、お腹の張り、痛みが出やすい場所など、細かなサインを丁寧に確認しながら、その人に合う処方を組み立てていくのが漢方の特徴です。

緒形さんが漢方の道に進んだのは、大学時代。薬学部の研究室で漢方を専攻し、大学院でも漢方の研究を続けてきました。卒業後はすぐに独立ではなく、まずは調剤薬局に就職。病院のそばや街中の薬局で、西洋医学の処方も含めて医療現場を経験しました。
転機になったのは、ご自身が“うつ病”を経験したことです。長期の休職期間を経て、復帰か別の道かを考えたとき、「サラリーマンに戻るのではなく、ずっと心のどこかにあった“自分の店を持つ”という思いに挑戦してみよう」と決意。病院の薬を続けながら少しずつ回復していくなかで、最後のステップとして自身の体調管理に漢方を取り入れたことも、「糸口」を開く大きなきっかけになりました。
だからこそ、「不眠やメンタルの不調で悩んでいる人に、特に来てほしい」と話します。
眠れない夜が続くとき、いきなり精神科に行くのはハードルが高いと感じる人も少なくありません。漢方薬店糸口では、必要であれば「これは早めに病院に行ったほうがいいですよ」とはっきり伝える一方で、病院での治療と併用しながら、漢方で“寝られる体づくり”をサポートすることも大切にしています。

「西洋医学の睡眠薬は、“今夜眠れるようにする力”はとても強いです。ただ、途中で何度も起きてしまう方も多い。一方で漢方は、日中から体のコンディションを整え、夜ぐっすり眠れるリズムをつくっていくイメージ。時間はかかるけれど、薬に頼りすぎない状態を目指しやすいと思っています」
漢方というと「長く飲まないと効かない」というイメージがありますが、風邪や胃腸の不調、不眠などでは「数日で変化を感じた」という声も多いそうです。もちろん、ホルモンバランスや体質に関わる悩みには、1か月単位でじっくり取り組むこともあります。それでも共通しているのは、「その人が少しでも楽になる糸口を、一緒に探す」という姿勢です。
最後に、お店のこれからについて聞くと、こんな言葉が返ってきました。
「漢方って“何ができるのかよくわからない”と言われがちなんですけど、実はできることはたくさんあります。大事なのは、薬を売ることより、その人が健康になる相談に乗ること。病院に行くべきときはきちんとお伝えしつつ、その手前の段階や、治療と並走しながら支えられる存在でありたい。予約制で少しハードルが高く感じるかもしれませんが、“ちょっと相談してみようかな”と思ったときに、思い出してもらえる場所になれたらうれしいですね」
心とからだが少し疲れたとき、漢方薬店緒が、新しい「糸口」になってくれるかもしれません。
店舗情報
住所:東京都武蔵野市中町1-21-12 蛸井ビル1階
電話番号:080-4622-1109
公式ホームページ: https://itoguchi-kampo.com/